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「ち、かい...!」
身体を押し返そうとするが、昨晩噛まれた鎖骨を舐められればゾクゾクと腰の奥から快感が染み出して、立っていられなくなる。
「あっ、ん...!」
今度は胸に吸い付かれた。
壁に凭れ掛かり、はぁはぁと短く荒い呼吸を繰り返す俺は堪らずに目を瞑る。
彼の細い指が、首、胸、腹、四肢を撫で、その柔らかな唇でキスを落とす。
「...本当、淫乱。恥ずかしくないの?足、どんどん開いてきてるよ」
恥ずかしいに決まってる。
それ以前に、こんな罵りで更に身体を過敏にさせる俺が最高に恥ずかしい。
耳朶を噛み、穴に息を吹き込む様にして囁いた。
「...咲夜ってさインランで、ドMだよね」
殴りたい、今すぐに殴ってサンドバック代わりにして鍛えたい。
身体に突き刺さるシャワーの水でも感じてしまいそうだ。
一体、俺の身体はどうなってしまったと言うのだろうか。
こんなに敏感じゃなかった。
こんなに気持ち良くなかった。
どちらかと言うとSだったと思うんだけど、今の俺は女そのものなんじゃねーの?
「違う!」
「ふぅん、まあ...どっちでもいいけどね」
不敵に笑った彼がギラリと目を光らせた。
「本当さいてーだわ」
「...いいじゃん、気持ちよかったでしょ?」
気持ちよかったから余計ムカつく。
隣りを歩く裕太は、堂々とVネックのTシャツを着て儚げな鎖骨を見せる。
そんなこいつを横目に、俺はギリと奥歯を噛んだ。
「あっ、咲夜おはよ~。どうしたの?珍しいじゃん!ボタン上まで掛けちゃって」
可愛い女子生徒がワイシャツの第一ボタンをしっかり留めている俺の存在に気付き、目を輝かせた。
が...そんな彼女を裕太が睨みつければ、そそくさと帰って行く。
サヨナラ、俺の青春。
誰も気付かないであろう、俺の服の下にある大量のキスマークと噛み跡が微かに疼く気がしたのは気のせいだと思いたい。
「いいか、裕太。ぜっっっったいに大和に変な気を遣わせるな!怪しまれるのもダメだぞ、御前みたいな普段ボケーッとしてる奴が、案外勘付かれたりするんだからね!!」
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