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「あっ」 彼の細い腕を掴んで、何とかトイレの外へと逃げ出す。 「あっ、じゃねーよ!馬鹿か!」 「誤算だった......が、結果オーライだったよ」 何こいつ、本当に殴ろっかな。 一体何が結果オーライだったのだろうか。 「誤算...どゆこと?」 「...さっき言ったでしょ。皆が咲夜に手を出せなくなればそれで良い。でも...腹立った。怖い想いもさせちゃったね」 なんで、そんな悲しそうな顔をするんだよ。 確かに怖かったさ。 もしかしたら、御前があいつらの話に乗るかもしれないって、ちょっとだけ思ったから。 「ごめん...咲夜」 今は勝手な行動を取ったことに怒る気にもなれない。 こいつにとっても、俺にとっても自業自得でしかなかったのだ。 こんな思考が狂ってる奴を許したくなるなんて、どうにかしてるよ...俺も。 「で...君が蹴って壊した、と」 それから壊されたトイレのドアは、一週間後に発見された。 元々、あまり使われていない様なトイレだったので警備員も見ていなかったらしい。 それに加え、一ヶ月以上も席を空けていた佐伯教授様が無事帰還なさって現に至る。 何故か俺まで床に正座させられた。 「...俺が興奮して、トイレに咲夜を連れ込んだんだけどね...偶然来た男子生徒に盗撮するぞって脅されたんだ」 !? 「咲夜とセックスしようとしたら、趣味わりーって言われるし腹が立ってね。つい、ガンッて」 「つい、じゃねぇだろ...」 「まあまあ、あんまり怒らないで」 鬼の形相で此方を睨み付ける佐伯教授様を、優しく宥めるジェントルマン姫神。 だから俺は最初っから、優しい姫神先生に相談しようって言ったんだ。 やだ、佐伯がいい。佐伯じゃなきゃいやだ。と駄々を捏ねたこいつは一体佐伯教授様の何なんだよ。 そもそもさっきから、俺達のこと話してるけど...佐伯教授様って「君達の恋愛をどうこう言うつもりはないが、場所をわきまえろ。ここは公共の場だぞ?大体、トイレでセックスをしようとした君らの責任だ。私には関係ない、話し掛けるな」って言いそうだけど。
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