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「......は?」
気持ちも何も、今のこの状況って一体。
やけに真剣な目をした裕太にベッドへ押し倒され、頬を撫でられる。
「もし...俺のことが嫌いなら、諦めるよ。二度と手は出さないし、話し掛けない」
こいつに好かれても別に嬉しくないけど、相手にされなくなったらされなくなったで寂しいかもしれない。
なんて馬鹿げた考えをする俺は、何処かが壊れ始めていたのだろうか。
こいつと出会ってから、ろくなことがない。と言うのは本当だったが毎日は充実してたし楽しかった。
無口で無気力な奴かと思えば案外喋るし、真顔でセンスのないギャグだって言う。
うわ、なんだよ...。
こいつの隣、俺にとっては意外と居心地が良かったんじゃん。
「......嫌いじゃねーし」
「何それ...」
何処か安堵した様にも見えた裕太の表情に、俺までホッとする。
口角を緩やかに上げて目を細めた彼は、俺に背を向けて目を閉じた。
「...えっ、なに。寝るなら帰れよ」
「御前が帰れ...」
「ここは俺の部屋だろうが!」
ムキになってガクガクと肩を揺さぶると、むくっと起き上がった彼に濃厚なキスをされた。
「...俺のこと、好き?」
「べ......つに好きではないけど...」
「そう?じゃあ俺が咲夜のこと愛してあげるね」
誰も頼んでません。
隣にいてもいいから、これ以上変なことを企むな。と言うことだけを伝えると無言で何度も頷きベッドの上をゴロンゴロンと転がる。
「...咲夜の隣にいれるなら、それでいいんだ」
ちゅっ、と小さなリップ音を立てながら指先に口付けを落とす裕太は綺麗に笑って見せた。
「裕太...御前、何も考えてないようで考えてるんだな」
「...まあね。俺が小さい時に、両親が離婚したんだ。再婚相手との間に出来た子供...所謂義弟に全てを奪われてね。いや、全てと言うのは言い過ぎたかな...。再婚相手だった母親は、俺なんかよりも弟の方を可愛がった。自分の血が混じってるから当然だけど、小さかった俺には結構ショックだったんだ。それからかな...人一倍独占欲が強くなったのは」
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