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「先生!こんな所で寝て、風邪ひきますよ!お医者様が風邪をひかれたら困ります」
「...おはよ。珈琲淹れてくれる?」
ここは街の総合病院。
有名な医師が集いに集った大きな病院だ。
毎日、日本中...いや世界中から沢山の患者様が足を運んで来られる為大変忙しい日々を送っている。
とは流石に言い難いか...。
「いいですけど、昨日の様な仕事振りをお願いしますね」
「俺以外にも腕のいい医者がわんさかいるんだ。昨日だってそんなに仕事なかったけど?」
家に帰るのが面倒で昨日は院長室に寝泊まりをした。
脱ぎ散らかした服と白衣を掻き集め、予め用意しておいた洗濯機へ乱雑に突っ込む。
人生の半分はここで生活して来たと言っても過言ではなく、自分の院長室を第二の家とも考えている。
「東棟は小児科だし、西棟に比べれば全然暇だよね」
「確かにそうですけど、仮にも東棟の院長なんですよ!?お昼に起床ってどういうことですか、黒田先生!」
...どういうことって言われても。
キーキー声を上げる看護婦の中居さんを無視してシャワーブースに入ると、彼女は絶望した様に崩れ落ちた。
「黒田先生、午後から回診が入っております。ご準備を」
また一人部屋に入って来たらしい。
深瀬あやめ、と言う大層立派な名前をした看護婦はナイスバディな上、顔も良い。
俗に言う才色兼備だ。
普段はあまり笑わないが、子供の前では無邪気に微笑んで見せることもあり、一部の間でひっそり人気があった。
「...分かった。着替えるから出て行ってくれるかな?」
中居さんは頬を染め、淹れた珈琲をテーブルに置くと素早く出て行く。が、深瀬...何故君は出て行かない?
「黒田先生。是非、貴方の整った身体をご拝借したい」
「ご拝借って何だよ」
才色兼備な彼女でも、どうやら頭のネジが足りないらしい。
タオルを手に取り身体を拭いて、シャワーブースを出ると深瀬が堂々とソファーへ座っていた。
「あら...水も滴るいい男。案外鍛えてらっしゃるのね、素敵」
「出 て け」
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