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よくもまあ飽きないで、ニコニコニコニコ愛想を振りまけるもんだ。 こいつに黄色い声を上げる奥方の気持ちが微塵も理解出来ない。 何がいいんだ...? やはり甘いマスクか、柔らかな物腰か... 「でも一緒にいたら、きっと襲っちゃうね」 この低音エロボイスか。 睨み付けて知らんぷりすると、彼は苦笑を溢してキッチンへ立った。 どうやら本当に夜ご飯をご馳走してくれるらしい。 が、逃げ出すなら今だ!! ダボダボのシャツを着たまま全力ダッシュで玄関の扉へと向かうのであった。 「あ、そうそう。玄関の扉ね...指紋と虹彩認証システム付いてて君じゃ開かないから」 ずるっ 思わず滑って転んだ。 うう、痛い。 半ば這う様にしてソファーに座り直した俺は仕方なく、仕方なーくテレビをつけてぼんやり眺める。 こんな風にテレビを見たのは久し振りかもしれない。 東棟は夕方の18時で終わるが、西棟は朝から晩まで交代制でやっているから、朝比奈にだってテレビを見る時間なんて無いんだろうな。 「......朝比奈先生、今日はもう仕事無いんですか?」 「うん、緊急で呼び出されない限り無いよ。久し振りに明日もオフだから劉生と過ごしたいと思っていたんだ」 まあ、明日俺はオフじゃないんですがね。 最初は綺麗な姿勢を保っていたつもりだったが、時間も経ち段々とダラけてくる。 柔らかな肌触りをしたソファーにベッタリ張り付いて今にも寝てしまいそうになる目を必死に開けていたが、バラエティ番組を朦朧とする意識の中で見ていた俺は、いつしか目を閉じてぐっすり眠っていた。 ふと目を覚ましたのは夜明け前の4時。 どうやら、かなりの間眠ってしまっていたらしい。 いつもの様に手探りで携帯を探す俺は、何か不思議な感触を手にする。 温かくて、柔らかい。 「...えっち」 「っ!?」 「人の胸揉んで楽しい?」
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