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本来、医者と言う者は有給休暇を消費出来ない人が殆だが代役の医者が沢山いる総合病院では案外取りやすかったらしい。 今まで有給休暇なぞ取ったことも無かったから、多少の罪悪感はある。 ただでさえ若くて親の七光りと陰で言われている俺が、仕事もしないで温泉に行ってきました~ってなったら周りの人間はムカつくだろうが。 「深瀬...俺は仕事をしたいんだけど」 「あら、そうなんですか?しかし、ずっと働き詰めでしたでしょう?たまには身体を休めることも大切ですよ。私のデータによると、黒田先生は休み無しで86連勤してますから。それでは」 彼女は、案外いい女なのかもしれない。 朝比奈の愛車に乗って山奥の旅館に到着すると、自然の空気を沢山吸い込んだ。 旅行なんて本当に久し振りだな。 本来、朝比奈と温泉旅行なんてしたくないが貴重な有給休暇を取ったんだもん。 充実した休みにしないと...! ロビーで鍵を渡され、嬉しそうに笑う朝比奈と二人で並びながら部屋に入る。 「凄い綺麗ですね」 「うん、そうだね。でも劉生の方がもっと」 顔面にパンチを食らわせ早速座布団の上に胡座をかいた。 大浴場の温泉と、各部屋に付けられた露天風呂。 折角だから大浴場へ行こうかな。 なんて呑気に考え事をしていると、背後から優しく抱き締められる。 「...汗かいてから温泉行こうよ」 「何を仰ってるんですか、殴りますよ」 「そう言わなくても殴るくせに」 項にチュッとキスを落とされれば身体が震えてしまう。 それ所か、腰の奥から熱が染み出してくる。 前のめりになって彼の男らしい手に指を重ねたが、あろうことか今度は耳を執拗に責め立ててきた。 「やっ...ぁん、耳はダメ...」 「劉生、声エロ過ぎ。食っていい?」 「い...」 「い?」 「いい訳ねーだろ!!」 完全に怒った俺の機嫌を取るべく、朝比奈は沢山のスイーツを買って来た。 テーブルの上に並べ、どれでも好きな物を食べていいと言う。 まあ許してやらないこともない。
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