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ランラン気分の俺とは裏腹に、隣の大きな男は大学に近付くにつれて元気を失いつつある。 「どうしたんだい?雨宮先生、元気が無いじゃないか!」 「...佐伯教授に大変失礼な事を言ってしまったのを思い出しまして。切腹の覚悟で謝りに行こうと思います」 確かに、あいつ顔だけはやたらと怖いからな...。 視線で殺される。 「利孝はそんなので怒る様な奴じゃないから大丈夫だよ。俺も行くし、利孝の研究室に一緒にお茶しに行こ!」 「で...?茶を飲みに来たと言う訳か」 冷ややかな視線を送る利孝に、隣の雨宮は硬直している。 珍しいなぁ...雅樹ちゃんのこんな姿。 「佐伯教授、昨日は本当に申し訳御座いませんでした。自分はなんて失礼な事を...」 「昨日...?ああ、気にしてないですよ。俺も、京介の事を甘やかしてたのでこの際心を鬼にして接して行こうと思います」 え!? 「やだ!利孝!優しくして!」 「...冗談に決まってるだろ。用が済んだらさっさと帰れよ。俺は書類整理で忙しいから」 ぽいっ、と研究室の外へ二人まとめて突き出された。 茶を飲む暇すらない。 でも。 「ね、怒ってなかったでしょ?利孝は優しいから、怒らないよ」 自分の研究室に戻りソファーにどっかりと腰をかけると、雨宮は少し気に入らない様子で俺を見ていた。 「どーした?」 隣に遠慮なく腰をかけ、じーっと見詰められれば浮かべていた笑顔も引きつってくる。 「困った人ですね」 「は!?」 「正直妬きます。他の男の人を俺の前でベタ褒めしても、どんどん貴方を好きになる自分が悔しいです」 ...ヤキモチ? これが、ヤキモチか...? ......ヤバイ、嬉しい。 「前にも行ったけどこんな手のかかる、目の離せない人を好きになるのは希少価値ですよ。一人いれば十分ですから...本当に」 再び胸が早鐘を打ち顔を赤くさせていると、不意にキツく抱き締められた。 「今まで佐伯教授に守られていたのなら、今日からは俺に守られて下さい。早く京介さんに認められる様、俺も頑張ります」 こいつの事、明日はもっと好きになるんだろうな...と確信しながら、笑顔で頷く俺がいた。
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