もうひとつの糸

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ちょっと様子が伺えればよかった。 望んでいたことなのに、さっきまでの前向きな勢いはどこへやらで、足が震えてくる。 優尽のことばかり考えて自分勝手にここへやってきたけれど、果たして良かったのか。 今更だけど別れた夫の再婚相手の娘なんて本当は会いたくないのかもしれない。 優尽を育ててもらった恩はあったとしてもそれはママであって、あたしが見舞う理由などない。 ただの迷惑だったらどしよう。 不安ばかりが湧いてくる。 それでも。 ここまできてしまったのだから、しょうがない。先へ進むしかない。 腹を括って彼女の前を歩いた。 病室は迷惑だと考え院長先生と過ごしたデイルームへ足を向けた。 「あの、一体……」 「……高野緑です。きっと亡くなった父のお葬式でお会いしてると思います」 途中、何度もあたしの顔を確認していた彼女にそう告げると、合点が言った様子で黙りむ。 「ここでもいいですか」 さっきとは逆に、今度は日当たりの良い窓側のテーブルを選んで座った。
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