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絵奈は冷めた目で愛夢を見下ろしている。通報したことを疑われても、反論しないでいる。
カイチは愛夢の腕を掴み、「そろそろマジでやべぇよ」と言った。
愛夢は悔しそうに舌打ちをすると、絵奈から手を離した。床に落としていたスマートフォンを取ると、リビングにぶら下がったタオルを使って丁寧に指紋を拭き取った。
冷蔵庫の扉を開け、謙介の首の隣にスマートフォンを置く。
「これは、もともとパパのだからね」
愛夢は凪人とナツメを睨みつけると、部屋から出て行こうと歩き出した。
ナツメは愛夢の背中に向かって小さく呟いた。
「……ごめんなさい」
愛夢の小さな背中に、一吹を、謙介の妻を、そして謙介を見た気がした。自分の弱さが招いた悲劇を、まだ10代の少女が背負っている。
愛夢はナツメを見ないで言った。
「あの女も、そんなこと言ってた。……でも」
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