第二話 とんでもない思いつき

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街の上はハルの操縦するのと同じようなモータービートルがあちこちを行き交う。 色や形は様々。その殆どが家庭用の物ばかりだ。 「街はすっかりスピッツバード世界大会一色だなあ……」 港の近くにあるパン屋の店に向かう途中、ハルは週末から始まるモーターバードの世界大会に向けて港で着々と準備が進められていることに気付く。 無人気球からは、”スピッツバード世界大会” の大きな垂れ幕が下がり、行き交う人々やモータビートルの運転中に視界に入るようにしてある。 「パン屋、パン屋っと……」 気にはなりつつも、ハルはパン屋の赤いレンガの建物を見つけ、旋回してからゆっくりとレバーを引き下げる。 足元に操縦席のすぐ脇のボタンを押すと、モータービートルのお尻部分から着地用の錆びた鉄の足が現れた。 足元のペダルを数回踏んでスイッチを切り替えるごとに、忙しなく羽ばたいていた羽の動きが徐々に速度を落としてゆく。 店の傍にふわりと舞い降りたモータービートルに、パン屋の主人が慌てて店から手を振りながら飛び出して来た。
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