第二話 とんでもない思いつき

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「お前さんの操縦には、いつも惚れ惚れするよ!」 「こいつ、ちゃんと直ったよ。エンジンを取り替えておいたから、まだまだ飛べるよ」 エンジンを切ると、ゴーグルと両脇に通していたシートベルトを外し、軽やかにハルは機体から飛び降りた。 「流石だな。お前の手にかかりゃ、どんなポンコツだって魔法みたいに蘇るってなもんだ」 約束の代金をハルに手渡し、パン屋の主人は予め用意しておいた焼きたてパンを包んだ紙の袋も一緒に差し出す。 「これも持ってけ。まだ飯食ってないんだろう?」 「ありがとう」 へへっと笑い、ハルはそれをありがたく受け取る。 「そうだ、ハル……。昨日の事なんだが、大丈夫なのか?」 主人が心配そうな顔でぽりぽりと頭を掻いた。 「だ、大丈夫だよ! なんともないから」 祖父の借金のことをパン屋の主人に知られやしまいかと冷や冷やしながら慌てて苦笑いを作る。 「本当か? もし何か困ったことがあったら、遠慮せず言ってくれよ? 俺も随分お前のじいさんには世話になったんだ」 「心配いらないって。大丈夫だから!」 慌ててモータービートルのキーを主人に手渡すと、ハルはくるりと反転して駆け出す。 「ごめんおじさん! ぼく、今日は午後からもう一件仕事があるんだ! 急ぐからもう行くね!」
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