第三話 レース開始

2/14
前へ
/487ページ
次へ
修理工場の片隅で、剥がしたスピッツバード世界大会のポスターを眺めながら、ハルは腕組みして考え込んでいた。 優勝者には二〇〇ビベルが賞金として与えられる。 ハル自身モーターバードの操縦は得意なものの一つで、これ以上のチャンスは無い。 けれど、それには大きな問題があった。 「参加資格。十六歳以上……か」 ハルは十三歳。考えたところで三つも年齢に達していないということになる。 (ここで諦めたら、じいちゃんの工場も、全部なくなってしまう。一か八かやってみるしかないか……!) ハルは工場の隅にからロープで吊るされているものに目をやる。 そっと掛けられていた巨大な薄汚れた布を剥がすと、真っ白に輝く機体が現れた。 「やあ、エアリエル。君の力が必要なんだ」 翼を閉じたままの白いモーターバードは、まるで白く輝くツバメそっくりの姿だ。 ハルは愛おしそうに彼女の身体にそっと触れる。 亡くなった祖父がハルの為に作り上げた最高傑作の機体である。 「君と僕とで、じいちゃんの工場を守るんだ」 ハルはぎゅっと拳を握り、一世一代の大勝負に臨むことを強く決心したのだ。
/487ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加