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「はん、じいさんに孫がいたのか。こりゃ初耳だぜ!」
愉快そうに笑みを浮かべ、男は後ろの黒ずくめの男達に目配せする。
「一体どなたなんですか?」
「チビ、今すぐじいさん呼んできな。ガキには用はねえ」
男はそう言って、黒いスーツにはまるで不似合な程のオレンジと黄色の度派手なネクタイをわざとらしく締め直して見せた。
一息ついてから、ハルは口を開いた。
「祖父はいません」
「はあ? なんだと?」
間髪空けずに、男はハルににじり寄る。ハルが祖父を匿っているとでも思ったのだろう。
ところが……、
「祖父は先週亡くなりました」
「じいさんが死んだ!?」
至って真面目な表情のまま、ハルがそう言ったのを耳にした途端、男は顔を真っ赤にして近くに転がっている部品の入った瓶を蹴り飛ばした。
直後、瓶が粉砕するガラス特有の音が修理工場の中に響く。
「ええ。だから、今はぼくがここの修理工場長です」
ハルは、祖父の工場を荒らされることに不快な表情を浮かべ、じっと割れた瓶と散らばった部品に目をやった。
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