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「・・・・・・」
「そうだよ。人は人を救わない。人の心の痛みなんて・・・分かってくれるヤツは誰もいない。だって見たくないじゃないか。人の壊れた心なんて。だって聞きたくないじゃないか。壊れたヤツの悲鳴なんて。だって人の壊れた姿は無惨だ。人の壊れる悲鳴は聞くに耐えない。そんなものをいちいち見てたら、聞いてたら、他人の痛みなんていちいち全部分かってたら、気が狂ってしまう・・・耐えられないよ・・・だって人間は、自分の痛みだって、独りじゃ耐えることは出来ないんだから・・・」
「・・・岬・・・」
「そうだよ・・・他人の痛みなんて、分かったって苦しいだけだ。死に向かっていくだけの人を眺めていることと同じぐらい、どうしようもなく辛いだけだ。でもだからこそ、人の痛みなんて、『考えようとしなければ分からない』。『考えなくても生きていける』。考えでもしなければ分からないからこそ、人は簡単に、他人の痛みを無視出来るし、放置出来るし、簡単に、傷つけることだって出来るんだ。責める事だって出来るんだ。それを忘れて生きていくことも出来るんだ・・・だったらせめて、『他人を終わらせたヤツは、自分が終わって当たり前』、せめてそういう、最低限のルールを、作っていくしかないじゃないか。『そんなの当たり前だ』って、そうわきまえさせるしかないじゃないか。そんな事も分かっていない、馬鹿が、この世にはたくさんいるんだから、そう『檻』を作ってやるしかないじゃないか・・・人の心は『読めない』んだから・・・そうするより他にないじゃないか・・・」
「・・・・・・」
「だから・・・ぼくは死刑を望むんだ。なぜならそれを『当たり前』にして欲しいからだ。ぼくはそれをわきまえた上で、あいつらを殺す決意をしたんだ。最初から、やり直す気も、生きる気もないんだよ。そもそも、ぼくは生きてさえいない。・・・ただ死に損なっていただけだ」
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