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「岬。許してくれ。俺の、俺の責任だ。でも、まだ、間に合うはずだ。やり直すチャンスをくれ。どうか俺に、やり直すチャンスを与えてくれ」
「君がやり直す必要はないよ。君は『友達』だ。『ただ付き合うだけの存在』だ。ぼくは君に守ってもらえる『家族』じゃない。だから、君がやり直す必要はない。そしてぼくには、やり直す『権利』がない。やり直すやり直さないの問題じゃない。『やり直せない』んだ。生きてもうやり直すなんて、ぼくにはもう、その『資格』がないんだ」
「なんでだ。なんで、お前は、まだ生きてるのに!」
「なんでって、簡単だよ。ぼくが『人を殺したから』さ」
愕然と目を見開いた恭也に、ぼくはむしろ、驚きを通り越して呆れていた。なんでそんな簡単なことが分からないんだろうと、そんな虚しさを、かつての『親友』に対して感じていた。
「そもそも、おかしいと思わないか?人殺しに、殺人犯に、犯罪者に、人の人生を『終わらせる』ような真似をしたヤツに、『人生を続けていく権利がある』?おかしいじゃないか。そんな権利があるはずない。だって、権利っていうのは、『義務』や『ルール』を守っているヤツだけに許される、『ご褒美』みたいなものだ。義務を金に例えるなら、権利はチョコレートみたいなものだ。金を払わないヤツにチョコレートを渡す必要はないように、義務やルールを守らないヤツに、権利を許す必要はない。当たり前じゃないか。ただの『当然』ってヤツじゃないか。他人の人生を終わらせたヤツに、人生を続ける『権利』はない。・・・そんなの、ただの『当たり前』じゃないか」
「・・・岬」
「もちろん、故意ではなく、過失で罪を犯してしまった場合は、その限りではないかもしれない。『故意』ではなく『過失』なら、やり直すチャンスはあってもいいのかもしれない。でも、『故意』は駄目だ。自分の意思で他人を傷付けたヤツに、そんな権利は許しちゃダメだ。自分の意思で他人を終わらせるようなヤツは、自分の人生を続ける『権利』はない。そんなの、『当たり前』じゃないか」
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