第1話 ~fast butterfly~

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「お前、無理し過ぎなんじゃねーの? 最近ちゃんと寝てねーだろ。」 この人にはいつだってお見通しなんだ。 だから嫌いなの。 あたしは誰かに弱さを見せれるほど 強くなんてなれねーんだよ。 「寝てるよ、それなりには。」 「相変わらず可愛くねー女だな。 もーちょい素直にならねーと いつまでたっても男出来ねーぞ?」 「こらぁ~!! 雛乃の夜桜いじめないでよ!!」 あたしには守るものも 大切にしなきゃならないものも もう何も……何1つないの。 素直になれてたら 家飛だしたりしなかったつーの。 「雛乃、ありがと。 でもね、矢崎さんの可愛くねーて 言葉は愛情なんだよ? いつものことだから慣れちゃった。」 「あはははっ! やっぱ、お前可愛くねーわ。」 ニッカにサンダル姿のいつも通りの 矢崎さんなのに今日は何だか寂しげで ふいにあたしは泣き出しそうになった。 「可愛くなりたいよ、あたしだって。」 聞こえるか聞こえないかの小さな声で あたしは涙を堪えながら呟いた。 本当は心では分かってる…。 孤独も、寂しさも本当は凄く凄く怖い。 でも、誰かにあたしの全てをさらけ出すにはあたしの傷はデカ過ぎる。
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