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翌朝、揺れる荷馬車の中で羅魏は目を覚ました。
「……どこじゃここは?ああ、頭がずきずきする……二日酔いか?いや、酒は飲んでないし……んん?」
ほろの外から女の声が、聞こえてきた。
「夢摘さんお手柄~!冥の印みつけちゃうし~!まして鬼さんなんて!彼方は~次回の演目!酒呑童子がいいと思うな~」
(!そういえばわし、昨夜は久しぶりに鬼になってしまって、夢摘さんを助け出して……どうしたっけ!?)
「だめだめ!せっかく由比さんがどさくさに紛れて、がんぞう最新型もびるすーつ取って来てくれたんやかい!がんぞうにすっが!」
ふと、羅魏は隣を見ると、自分と同じ丈の新型もびるすーつが寝ころんでいた。
思わず抱きついていると
「お気づきになりましたか?」
ほろがめくれて、浅葱の羽織の侍がゆれる荷馬車に腰を掛けた。
「心配はご無用!檜井羅魏殿。あなたの事は、おばあ様にこちらの由比殿の事情をお話しして、許可を頂きました。職場の方にも、私から休暇届を出しておきました……昨夜は、事情も分からず、刀を向けてしまって申し訳ない」
「あ!どうも……」
よく意味が分からないが、とりあえず羅魏も体を起こして頭を下げた。
「傷、痛みますか?私も、ばけものの血が入っていますので、そうなることがあるのやもしれませんな……最近、木々の話す声が聞こえるような気がします」
武士が去った後、揺れる荷馬車の中で、羅魏は自分の置かれている状況を整理した。
頭も指先も、包帯でぐるぐる巻きだし、口の中は血の味がする。
傍らに伝家の宝刀……
「……わし、見世物小屋にでも売られたのか?」
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