ブレイク3~頑張れ!鼓子さん~

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鬼を見るのは初めてだ。  揺れる荷馬車の中で、鼓子は羅魏の包帯を変えながら、夕べの事を思い出した。    由比のぱそこんの位置情報を頼りに、馬を飛ばす。  星一つない今夜は、真っ暗で鼓子には一寸先も見えない。  由比と蜂文は、そんな鼓子を置いてどんどん闇の中を先に行ってしまった。 (彼方さんと、待っていた方が良かったかな?)  彼方は一座の出し物の買い出しに、ミハイルと行ってしまった。 「夢摘さんなら大丈夫だし」  彼方には、常人には見えない何かを感じる力があることには、薄々気づいていたけど。  鬼に連れ去られたと聞いて、いてもたってもいられなくなってしまった。 「……本当に、手のかかる子なんだから……」  二人に追いつくことを諦めて、黒兎馬の手綱を引いた。いつの間にか竹林の中に迷い込んでしまっていた。  軋む若竹の香り。  その中に血の香り――――  竹林の奥で、小さな明かりが見えた。闇に白く浮き上がる銀髪。 「夢摘さん?」 「鼓子さ~ん!羅魏さん血がいっぱい出てて……」  鼓子は馬から下りると、駆けてきた夢摘の銀髪にげんこつした。 「もう!何回心配させれば気が済むの!!勝手にふらふらしたらダメでしょう!!!」  「……ごめんなさい……」  隣で、黒兎馬が怒ったように前足で土を掘った。
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