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竹林の中に老婆と気を失い横たわる男がいた。
鼓子は携帯していた包帯と傷薬、縫合用の針と糸を準備する。
夢摘に小さな灯りで、手元を照らさせた。
左右のこめかみ二か所と額の真ん中に一か所。
角は抜け落ちているが、出血は止まらない。
「怖くないのか?不思議な娘たちだな」
「怪我人を放っておけません」
老婆は、傷を縫う鼓子を見つめて口を開いた。
「うちに嫁に来ないか?」
城の衛兵の休暇を利用して、北国まで駆けつけた蜂文のお蔭で、羅魏に関する手続きはテキパキと完了した。
昼過ぎには、由比の国を目指して出発していた。
ずっと眠り続ける羅魏の裂けた指先に包帯を巻きながら、夕べ老婆から聞いた羅魏の一族にまつわる話をぼんやり思い出していた。
羅魏の傍らの刀は、心の鬼を封じている。
形見離さず身につけよ。
ただ
それでも
心も鬼になるのなら、その時はこの刀で斬って下され。
口を開けて、のんきに寝ている羅魏からは、そんな悲しい運命なんて微塵も感じられないけれど……
ふと、羅魏が苦しそうに何かを呟いた。
鼓子は、聞き取ろうと羅魏の顔に耳を近づける。
「きゃー!鼓子さん!!こういう殿方がたいぷだったの~?お邪魔しました~」
彼方が笑って、ほろを閉めた。
その後ろで、自分の背丈よりも大きいがんぞう新型もびるすーつを抱えた夢摘と目が合った。
「……そんな、博打好きで、がんぞうおたくで、ぐーたらな男が好きと?」
「へ?!違うから!夢摘さんの方が仲良しなんでしょう?」
「多分!世界で一番気が合う!最高の親友になれる!!」
「……じゃあ、好きなの?」
「誰が~そんなおたくと恋に落ちますかいな~!羅魏さん、目が覚めて、横にがんぞういたら、きっと一気に元気になるかい、これ寝かしとこ~」
うししと笑いながら、羅魏の横にがんぞうを置く夢摘をみながら
「あんたも、相当なおたくだと思いますけど………」
と、突っ込みを入れた。
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