男冥利に尽きるもの~檜井羅魏~

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いつも、いつでも  何度も、何度でも、  思うのは…… 「なぜあの時!やめておかなかったのか!!」  昨夜、賭博から蹴りだされ、冬から転がり込んでいた女の家からも追い出された。 「儚い恋だったな……」  おんぼろ神社の境内で、うっとおしいほど伸びきった前髪をかき上げて、羅魏(らぎ)は寝転がったまま伸びをした。  博打で十二連勝して、そこでやめておけばよかったのに……いやいや、そこからの三連敗の時点でやめといても、花街でどんちゃん騒ぎ出来たのに……  今朝は、北国でもムシムシ暑い。蝉の声まで「お前はあほか」に聞こえてくる。  「……腹減ったな……減りすぎてふらふらする……ん?向こうから子牛が歩いてくる……上手そうだな……塩こしょうして、備長炭で焼いたら上手そうだな……」  ふいに子牛が二本足で立ち上がって、社の方へ駆けてきた。黒縁のめがねまでかけている。 「腹減りすぎて、幻覚でも見えているのか?」  子牛は肩肘ついて寝転がる羅魏の足元でしゃがみこんだ。 「おじちゃん!ここどこ?!」 「……おじちゃん?へこむな~……何だ?迷子か?めんどくさいけど、番所に連れて行ってやるから、ついてこい」  子牛はめがねをとって、涙をぬぐった。 「ありがとう……流星☆ミ一座とはぐれて、どげんすっかと思っちょった」 「……女?!銀髪!めがねっ子?何だ?この、萌えな感じは……」 「よく子供に間違えられるけど、大人やかい。夢摘です。訳あって、いけめん探しの旅に出て、こんげな北国まで連れてこられました。流星☆ミ一座の大道具係です。座長はいけめんだけど、機械おんちの由比さんです」 「あ!檜井羅魏(ひいらぎ)です。漢字で書くと、ちょっと画数多くて面倒です。訳あって、こんなところに寝てましたが、本職は竹林館で教師をしております。他にもいろいろ……内緒ですが、ばいと掛け持ちです」  ふたりは、おんぼろ神社の床に正座して、深々とあいさつした。
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