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「切ないと言えば、新型もびるすーつは博打の景品になったそうだの?しゃあない!我が家の伝家の宝刀を質に入れて……あ!昨夜、賭場で借金のかたに取られたの忘れてた……しまった、ばあ様に殺される……」
夢摘は、前髪で顔が見えない羅魏を見つめて、
「よし!賭場に行くが!新型もびるすーつげっとすっが!!ばあちゃんの宝刀もついでに、貰ってこよう!」
「わしのはついでか?資金はどうする?」
「まかして!こん小枝で、がんぞうは無理やけど、量産型前鬼とがんおけなら作れるかい!中にぜんまい入れて、動かすと!」
*補足*「量産型前鬼」「がんおけ」
二つとも対戦初期に作られた量産型もびるすーつ。前鬼は多国籍軍。がんおけは伊豆に流れ着いた前鬼を元に、じぱんぐで開発された。
「おお!!夢摘さん器用ですな~!では、塗装はわしが致そう!!」
盛り上がる二人に、こぎれいな身なりの子供が三人駆け寄ってきた。
「檜井先生?何してるんですか?もう、学校始まりますよ!」
「今度、遅刻したら校長先生が首にするっておっしゃってましたよ」
「公務員は副職禁止でしょう?」
羅魏は我に返って、
「しまった!今何時じゃ!!」
「あと、十五分で始業です」
羅魏は、しわくちゃの袴の裾を伸ばして、髪を手櫛で整えた。
夢摘は持っていた前鬼へあごむで、羅魏のうっとおしい前髪をちょんと結んだ。
「羅魏さんて、こっちの方が、よかにせさんや」
「ん?すまんが、昼過ぎにはもどるから、後は頼んだ!」
「は!ご無事で!!」
二人は、敬礼した。
羅魏と生徒は、境内を走りながら荷馬車とすれ違った。
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