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鼓子が後ろから黒兎馬にまたがって、荷馬車に声をかけた。
「いない。ミハイルさん!本当にここでがんぞうとかいうおもちゃ見てたの?」
「はい。夢摘さんはどうしても欲しいらしくて、二百文にまけろって……」
「何でちゃんと見とかないのよ!ただでさえ、夢摘さ
んはすぐ迷子になるのに……もう、何度目よ……」
「……だって、隣の店で、妻に似合いそうな帯留めがあったから、贈ろうかなと思って、見てたんです……」
少し先で、彼方が道行く人に声をかけていた。
「もし、牛見ませんでしたか?え?ナンパはお断りです~彼方に会いたかったら~お金たくさん持って~お芝居見に来てね~」
鼓子の眉間のしわが一段と深くなる。
「由比さんはどこ行ったー!!!」
鼓子の視線の先で、由比がべったり厚化粧の女に、手をぶらぶら握られていた。
「今夜遊びに来て。北国白肌美人がいっぱいだし、賭け事も出来るから……ね!」
鼓子が黒兎馬から飛び降りて、鬼の形相で由比の肩をたたいた。あまりの迫力に、女は由比にちらしを渡して逃げて行った。
「……何してんですか?夢摘さんは見つかったんですか?」
ふと、由比の持っているちらしの文字に鼓子は目を止めた。
「からくり戦士がんぞう新型もびるすーつ…………景品で参上」
二人の後ろから覗き込んだミハイルが
「あ!これこれ!!夢摘さんが値切ってたのは………懐かしいですね~」
「すごい!十分の一モデルって、大きいな!!」
鼓子の額のしわが一層深く刻まれる。
(……わからん!何故これが二百文の値打ちがするのか……全然分からん……)
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