男冥利に尽きるもの~檜井羅魏~

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 今日も、羅魏の授業は、子供達には大人気だ。  本日は、心のしみる名言集を(普通、漢詩や格言などから引用するのだが)、がんぞう名言集より引用する。 「七転びがんぞう!」  子供たちが復唱する。  ふと、寺子屋の格子窓から、校長の厳しい視線を感じた 「………邪鬼が来たか!」  午前中の授業が終わると同時に、羅魏は教室を後にした。 「檜井先生!話があるのだが………」  校長の呼び止めにも応じず、羅魏はおんぼろ神社へ一目散に駆けて行った。  先ほど別れた市の場所に夢摘の姿はなかった。  ふと、近くの木の枝に「ぱろん」の飾りがかかっていた。その裏に 「紫外線で死にそうなので、神社で待つ。夢摘」  急いで、おんぼろ神社の半開きの扉を開けると、入り口から一列に前鬼が並んでいた。  その奥におかっぱの銀髪の女が倒れている。 「………夢摘さん?」  羅魏が駆け寄ると、茶色の瞳がパッチリ開いて起き上がった。 「……遅いかい、出来上がり次第、売っ払った。これで資金足りる?」  夢摘の手のひらいっぱいの銭の山。 「……夢摘さん!かたじけない!!わし、何の力にもならんかった」  羅魏は、頭の前鬼へあごむを外して頭を下げた。  夢摘は立ち上がって、羅魏に手を差し伸べた。 「さていこうか、相方」
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