男冥利に尽きるもの~檜井羅魏~

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「イチニノ半!」     賭場が一斉に盛り上がった!  その時! 「御用改めである!神妙にお縄に付け!!」  役人が踏み込んで、景品も刀ももみくちゃになった。 「逃げるぞ!夢摘さん!!」 羅魏がもみくちゃになっている夢摘の腕を引いた。 「ああ!がんぞう~!!!!!!!」  夢摘の体に、役人の縄が掛かる。 「夢摘さん!おのれ!」  羅魏が景品になっていた伝家の宝刀を手にして 「貰ってくよ!」  抜刀して夢摘の綱を斬った。 「公務執行妨害で捕縛する!!」  刺又(さすまた)で羅魏は床に押し付けられ動きが止まる。役人の縄が羅魏にかかった。  立ち尽くす夢摘の傍らに、黒い影が天井から降りてきた。 「普通の格好してるから、夢摘さんって分からなかった」  夢摘の縄を、由比が短刀で斬った。 「由比さん!おねがい!!羅魏さんも助けて……!?」  床にうずくまった羅魏のうっとおしい髪の間から、血を流しながら、角が二本生えてきた。  羅魏は苦しそうに雄叫びを上げた! 「うおおおおおおぉおおぉおおおおぉおお!!」  縄を引きちぎって、捕えようとする役人を拳一つでなぎ倒す。  瞳は血で赤く染まり、狂った狼のように牙をむいている!  浅葱の羽織の武士が、由比と夢摘の前に立つ。 「由比殿!化け物か?!……うちのばあ様並みだな……」  由比も立ち上がり武士の隣で抜刀した。 「蜂文殿、助太刀いたす」  後から、走ってきたミハイルが刀に手をかけた。 「わ……私も助太刀を……」  「ミハイルさんはダメ!!」  いつの間にか彼方もいて、持っていた蝶柄の扇で、ミハイルの手を打った。  彼方はじっと、荒れ狂う鬼をみつめて、 「ねえ、夢摘さん。あの鬼は知り合い?夢摘さんの名前呼んでるよ。無事かって探してるよ」 「うん。羅魏さん。がんぞう友の羅魏さん!」  夢摘が羅魏の前に進み出ると、羅魏は夢摘をひょいっと肩に担いで、風のように賭場を後にした。
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