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「で、どうなのさ?」
「どうこうなんて、なるわけないでしょう」
あたしは、刷毛を動かしながら、なるべくどうってことなさそうに答えた。
三年ぶりにモトカレと再会したという話を、つい、お客様である夏樹君に喋ってしまったのは、あたし一人では抱えきれない思いを吐き出したかったからだ。
夏樹君は、若いけれど誠実で、真っ直ぐで、話を聞くのがうまい。
ほんの少し、あの人にも似ている。
だから、たまにあたしも、美容師とお客様という間柄を忘れて、愚痴や本音をこぼしてしまうのだった。
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