episode6・①

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せっせと手を動かしながら、あたしはまた昨日の事を思い出す。 隆也の車の中で、あたしたちはほとんど黙ったままだった。 時折隆也が、「寒くない?」「寄りたいところはある?」そんなことを聞き、あたしは「平気」、「特にないわ」そんな返事をした。 しかし、間もなくあたしの家に着くというときになって、隆也は意を決したように口を割った。 _明日も、迎えに来ようか? _明日も? _ほら、きっと、明日も雨だから。 戸惑いがちに、祈るようにあたしを見つめた隆也を前に、でも、あたしの心は決まっていた。
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