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なにか言わなくちゃ。
そう思うのに、でも、言葉は形にならなくて、声にならない。
彼もまた、同じように、かける言葉を捜していた。
そこに、いったんやんだはずの雨がまた降ってきて、
「あ、雨…」
あたしは、そんな間の抜けたことを言った。
見れば分かる当たり前の事実。言葉に出すほどのことでもない。最近は晴れている方が珍しいくらいだった。
気まぐれな雨にうんざりしていたけれど、でも、このときばかりは雨の存在がありがたかった。
でなければ、あたしと隆也は、ずっとああやって見詰め合っていたかもしれないから。
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