episode6・①

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なにか言わなくちゃ。 そう思うのに、でも、言葉は形にならなくて、声にならない。 彼もまた、同じように、かける言葉を捜していた。 そこに、いったんやんだはずの雨がまた降ってきて、 「あ、雨…」 あたしは、そんな間の抜けたことを言った。 見れば分かる当たり前の事実。言葉に出すほどのことでもない。最近は晴れている方が珍しいくらいだった。 気まぐれな雨にうんざりしていたけれど、でも、このときばかりは雨の存在がありがたかった。 でなければ、あたしと隆也は、ずっとああやって見詰め合っていたかもしれないから。
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