episode6・②

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美容師をしてわかったことがある。 それは、施術をする側とされる側には、ほんの短い時間でも信頼関係が芽生えてしまうということ。 男も、女も、体の一部を預けた人には、心も許してしまうのかもしれない。 もちろん、そうならない人だっているけれど。 「けれど、千島さんほどの人なら、きっと、また良い人に巡り会えますよ」 ありきたりで、当たり障りのないセリフに、でも、千島さんは、ありがとうと言った。 閉じた目尻に、きらりと光るものが見えたけれど、もちろん、あたしは知らないふりをする。 誰だって、恋が終わった直後は、やり切れない想いに、自分自身を持て余す物だから。
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