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その時、携帯電話が震えた。画面に浮かんだ文字に、あたしの顔が緩む。
西村聖人
「もしもし、ごめんね。今、終わったところ。わかった、すぐに行く」
あたしは、もう一度鏡を確認すると、今度こそ彼の元へかけ出した。
きっと彼は、じれながらあたしを待っている。ちょっぴりいらいらして、タバコを立て続けに吸いながら。
いつも遅刻するあたしに、今日こそ文句の一つも言わなくちゃ気がすまないと考えているかもしれない。
それなのに、あたしに会った途端、彼はそんなことを忘れてしまうのだ。
花の咲くようなぱっとした笑顔で、「みぃたん」と、甘えた声であたしを呼ぶ。
いつも、そうだ。この3年間ずっと。
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