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石段前の通りは歩行者天国になっていて、すでに結構な人で溢れていた。
通りの両脇にはずらりと屋台が並んでいて、行列ができているところもある。これが午後一時を回るとさらに人が増えて来て、人波に逆らって歩くのが困難な有り様となるのだ。
石段前、まさにこの場所で水母と待ち合わせていたんだけど、これはちょっと探すのも一苦労するかと思いきや、そんな事は無かった。
大幅にサイズオーバーなレース編みのニットをだぼだぼと着込んでいる小学生くらいの女の子なんて、一人しか見当たらなかったからだ。
「おい、水母」
「ふぉふ? ふぉー、いひゃひ!!」
振り向いた水母は空凪町屋台名物、葡萄焼きをリスみたいに頬張っていた。ニットの袖に隠れた手で器用にも、六個入りのトレーと竹串を操っている。
「ふぉふぉい! ふーふぉーひひゃんおおふんふぁえふぃふぁ」
「飲み込んでから喋れ、わかんねーから」
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