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空凪浅葱はいつもの場所で、最後の練習に専念していた。時刻は午後一時半を回り、本番まであと二時間を切っている。しかし、浅葱の気持ちは自分でも驚くほどに落ち着いていた。
本当は拝殿で時間が来るまで待機しているよう両親から言われたのだが、やっぱり最後の最後まで万全を期したいと思った。
やれるだけの事はやった。
そう思える事が不思議と腹の底にずんと重石でも乗せたような自信となって、浅葱の身体を支えている。
きっとこの舞台を成功させる。それが今日までずっと見守ってくれた伊佐治への、何よりの恩返しになるから。
そしてあわよくばこの勇気を、伊佐治が失ってしまったものを埋めてあげられるような強い気持ちを、今度は浅葱の方から分けてあげたいと思うのだ。
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