終章 くらげとかめ -4-

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  第一人類によれば、サーバー内の仮想空間から切り離されてしまった俺は自前の機体に搭載された拝装用の実体逆転写装置とやらをフル稼働しながら、どうにか外見を保っているに過ぎないらしい。 つまり実質、機人化している状態にあるのだ。 もう浅葱以外、誰も俺の事を覚えていない。結菜も剣正も拝島先輩もあの車掌さんも、クラスの皆も父さんも母さんも。 そんな街に、記憶を失くしたまま放り込まれて正気を保っていられるかは分からないけど。 こんな世界を、知ったまま生きて行くよりは幾分かマシに違いないと思うのだ。 しゃん、と、甲高く涼やかな音が鳴る。 浅葱が舞台の上で、右手に握った神楽鈴をゆったりと水平に薙ぐ。柄から垂れる五色布が晩夏の風にふわりと尾を引いて、ひときわ甲高い笛の音が天高く舞い上がって行く。 まるで、何の救いも無く逝ってしまった二渡水母を、弔うかのように。  
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