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「そうそう、それに焼き魚の香ばしい匂いとか。やっぱり朝食は心にゆとりを・・・・・・ってうげっ!?いつの間に・・・・・・」  飄々とした声に、自然に相槌を打ちかけた拓未だったが、気が付いて向き直れば、すでに着席してお茶などすすっている里倉。拓未はそれを見てぎょっとする。 「やっ、おはようオタク君!」  当の里倉は、きのうのダメージなどなんでもなかったかのように涼しい顔をして、なれなれしく声を掛けてくる。 「誰がオタクだ?」  拓未は般若のような形相で、里倉に顔を近付ける。よほどオタクと呼ばれるのが我慢ならないらしい。 「だって・・・・・・机の上の手帳に書いてあったよ?『おたくたくみ』って。 この国の文字も、ちゃんと勉強したんだから☆」  里倉は拓未の怖い顔に少々びくつきながらも、茶目っ気たっぷりに言ってみせる。  髭の剃り跡が目立つロン毛のメガネ男に言われても、可愛らしさは微塵も感じない。  拓未は構わず突っ込みを入れる。 「まず気色悪い。・・・・・・それと、漢字には音読み訓読みがあんの!俺は『おたく』じゃなくて『おざわ』、尾沢拓未だ!!」 「ゴメンゴメン。・・・・・・でも、略したらオタクだよ?やっぱりオタク君だよね」 里倉タカシ、意外と頭の回転が早い。  ―あとで警察に突き出してやる。  拓未は本気でそう考えつつ、再度里倉を見やる。と、そこで彼が再び人間の姿になっていることに、その時点でようやく気付いた。 「あれ、また人間に戻ってる。きのうはオバケの人形みたくなってたのに」  里倉は先程のようにおちゃらけるでもなく、真面目な態度で返答する。
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