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「ああ、驚かせて済まなかったね。僕はこっちの人間じゃないから、この世界のものに意識を注いで仮の体を作らないと、まともに活動できないんだ。
けれど、この姿を維持するには相当気力と体力を使うんだよ。だから敵に動きがなくて、休めるときは・・・・・・」
そこで彼は、再び先程までの人形に姿を変えた。
「おおっ!」
「こうして小さくなって、消耗を抑えてるんだ。」
里倉は、人形のサイズになった身体には大きすぎる湯飲みを両腕で持ち上げて、器用にお茶を飲む。
本人には造作もないのかもしれないが、傍から見ると、危なっかしくて仕方がない。
「・・・・・・便利(というか不思議)な体だなぁ・・・・・・」
拓未が感心してそうこぼすと、彼は今度は見た目に適った可愛らしい声で、溜息混じりに言う。
「そうでもないよ?この前なんか、駅前の建物の中でぬいぐるみに混じって寝てたんだけど、いきなり頭を挟まれて、首吊り状態でぶら下げられたんだから」
「た、大変だった・・・・・・ね」
・・・・・・ここは何も言うまい。
「で、君は何も変わらないか?」
声に似合わない、落ち着いた口調で里倉は尋ねるが、拓未には何のことか見当がつかない。
「何が?」
―やっぱり覚えてないか。・・・・・・むやみに事に巻き込む訳にもいかないし、少し様子を見よう。
事とはなんなのか。里倉には何か思惑があるらしい。
「いや、別にないなら」
里倉は敢えて追求することはしなかったが、すると今度は、拓未の質問がやってくる。
「ところで訊きたいことがあるんだけど」
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