1

5/8
前へ
/57ページ
次へ
「ん?」 「きのうの奴等といい、あんたといい、一体何者なんだ?こっちの世界とか、普通の人間とかしきりに言ってたけど・・・・・・」  きのう拓未が一番聞きたかったことだ。里倉は少し黙っていたが、やがて再び人型に姿を変えると、極めて真面目に、そして優しい口調で話し始める。 外見はともかく、彼の声にはとても爽やかな、好青年の雰囲気があった。 「・・・・・・僕も君には本当のことを説明しようと思ってたんだ。 まず自己紹介だ。僕は夢世界[セントマーナ]の親衛戦士、ランス・マニアス。 里倉というのは、こっちの世界で動きやすいように作った、仮の姿なんだ」 「・・・・・・」  拓未はあまりに非現実的な言葉に疑問を感じたが、きのうのこともある。黙って納得することにした。 「セントマーナは、はるか昔に人々の希望、熱意、夢見る心や願いなど、さまざまなプラス思念が集まって創り出された世界で、こっちの人々の心と『夢』という形で繋がっている。  君達が何かを願ったり信じたりする気持ちが強いと、それが『夢エネルギー』としてセントマーナに送られてくる。そのエネルギーを糧に、セントマーナでは生命の樹が育まれ、そこから『奇跡』と呼ばれる力のかけらが、逆にこちらの世界に送り出ろ出される。 こうして永年、お互いに共生が保たれているんだ」  そこまで言うと、里倉はにわかに険しい顔になった。 「・・・・・・ところがここ数十年、そのバランスが崩れきてしまっている。 文明が発展するにつれ、こちらの世界の人々が夢見る心を忘れ、セントマーナでは夢エネルギーが減少し続けているんだ。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加