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そして厄介なことに、その影響は、永らく眠らせていた、とんでもないものを呼び覚ましてしまった・・・・・・」
「・・・・・・それが、『虚無』?」
拓未が尋ねると、里倉は黙って頷いた。
「そう。虚無はセントマーナと同じく、人の心から生まれた思念体だ。
だが我々との決定的な違いは、彼らの力の源が、君達の絶望、憎悪、無力感や喪失感といったマイナスの思念ということなんだ。
文字通り、この世に存在しないものを『虚像』という形で実体化させて、逆に存在するすべてのものを歪め、飲み込む究極の負の力。
皮肉なことに、現代に生きる人達が夢を忘れた分だけ、虚無を生み出す負のエネルギーが増大しつつある。」
「でも、その虚無がなんでこっちに?」
「わからない。けれど虚無には、偽りの姿はあっても、命がないんだ。
だからこの世のあらゆる実体を取り込むことで、自分達の存在を見出だしたいのかもしれない。
それに一番手っ取り早いのが、人々の心の闇につけこんで、夢見る心を絶ち、セントマーナを崩壊させること・・・・・・セントマーナが無くなれば、人々の心から永遠に希望が失われてしまう」
里倉はひと呼吸おいて、重々しく言い放つ。
「・・・・・・そしてこの世は命の存在しない、暗黒世界になってしまうだろう」
「って大変じゃんか!!何か止める方法とかないのかよ!?」
里倉の言葉に拓未はひどく動揺した。きのうの出来事が事実である以上、彼の言うその破滅の可能性も真実なのだ。
「虚無にも弱点はある。いくら強大な負の力とはいえ、元は人の思念だから、自分の力以上に強い心をもった人間には、容易に手が出せない。
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