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だから僕は、こちらの世界で虚無の侵攻を食い止めつつ、奴等と対抗できる強い心をもつ人間を探していたんだが・・・・・・」  そう言って里倉は、ポケットから何かを取り出してみせた。 「昨日の奇襲で迂闊にも『フォースコマンダー』をやられてしまったらしくて、変身できないんだ」  それは昨日、彼が変身の際や、さくらの記憶を消す際に使用した小さな機械だった。  拓未は思わず身を乗り出して、フォースコマンダーをまじまじと見つめる。こんなときでも、ついこういった小物に食い付いてしまうのも、ヒーロー好きの性なのだろうか。  しかしよく見れば、なるほど各所に亀裂が走り、焼け焦げたような痕が見受けられる。  拓未もわけが分からないなりに、事態があまり良い方向へ進んでいないことを理解した。そのうえで、敢えて尋ねてみる。 「・・・・・・もう直らないの?」 拓未の質問に里倉は溜息混じりに言う。 「エネルギーを転換してジャケットを具現化するパーツにヒビが入っているみたいだから、交換すればなんとか。 さっきセントマーナと通信をとったから、たぶん2、3日で仲間がパーツを持って、応援に来てくれるはずさ」 「・・・・・・その間に、また敵が責めて来たら?」 「仕方ないから生身で闘うさ。玉砕覚悟でね」  里倉は冗談でもいうような口調で軽く言った。 だが彼のことだ。いざそのような事態が現実になれば、本当に命を落とすことになっても闘おうとするに違いない。
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