白い世界

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オレはなんで切ってるんだ?と言いたいところを抑えて、重い体を起こして、田沼京子の近くに寄ってみた。 その間、田沼京子は髪を切る手を止めなかった。外のクラクションの音と髪を切るザッザッという音が混じる。 田沼京子の背後に回り、覗き込むとソファーには大量の切った髪が無造作に置かれていた。 田沼京子の後ろ髪は左側が肩より短く、右半分は肩甲骨まであった。 「昨日までの自分とはお別れなんだ…」と田沼京子は突然喋り出した。
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