白い世界

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オレはあっとかうーんと言ってごまかしていると、田沼京子は靴下ならここにあるよと言い出した。 田沼京子の座っている向かいのソファーにオレの靴下はあった。 入ってすぐ脱いだのを忘れていた。 オレはうわずった声でそれそれと言い、靴下を手に取りすぐにはいた。 オレは田沼京子を見ていなかったが、目の端で髪の毛を切っている田沼京子がオレを見ていることに気付いた。 オレはそしらぬふりをしてカバンを手に取り、靴をはく時にじゃねと言った。 すると田沼京子はあっと言った。 逃げられなかったかと思った。 オレはもう観念していた。
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