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「番号教えて」と田沼京子が言った。教えたくなかった。
このまま逃げられると思ったが、そうはいかなかった。
オレはまたしてもうわずった声で「そうそう、そうだね」と言ったのだが、その声の持ち主か自分だということに情けなくなった。
「じゃ教えておいて。あとでショートメールでアドレス送るから」と言った。
それで掛けなければ大丈夫だろと思ったが、甘かった。
「逆に教えて。前にそれで掛かってこなくて、友達通して番号聞くの面倒臭かったから」と言い、田沼京子は髪を切る手を一旦止め、携帯を手に取った。
いつでも言って大丈夫と言わんばかりに待っている。
「あっそう？わかった」と惚けたことを言ったが、内心見透かされているのかと思い心臓が大きく動いた。
多分、大丈夫だとは思うが、田沼京子はハサミを持っている。
襲いかかってくることはないと思うが、田沼京子の行動が予想出来ないので油断は出来ない。
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