第二章

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最後には報酬をちらつかせて畳み掛けてくるが それが、彼女から不穏な空気を纏わせるきっかけになったことを 会長自身は気づいていない。 「恐れ入りますが、一つ、進言させていただきたいことがございます」 彼女は、一見穏やかに見える。 他の女性社員と変わらず、物腰の柔らかな姿勢でこの場に挑み 会長に対しても最低限の礼儀作法を見せる。 だが、その胸のうちは人には見せられないほどマグマのようにグラグラと煮えたぎっていた。 彼女をよく知る親戚は、言う。 苗(八代苗)は、彼女の婆さんにそっくりだと 頑固で意固地、その上、他人に対して厳しく正義感が強い 八代は、自分が周囲にそう言われていることなど知らなかった 沈黙だけで先を促した会長に、彼女は冷ややかな笑みを浮かべた。 「私的な理由で、会社の財産を動かすと仰るのですか。私的な理由であるのならば、自らのポケットマネーで済ませるのが道理ではありませんか?」 八代は、心底呆れていた。 孫が孫なら、祖父も祖父だ。 自分の祖母の初恋の相手は、この目の前にいるクソジジイなのだ。 自分の推理と憶測が間違っていなければ―― それゆえに、自分は現在、こんなところに駆り出されているのだと思うと腸はとっくに煮えきっていた とんだ茶番に付き合わされている気分だ 「そうかっ、そうか!さすがは、八代の孫だ」 会長は、怒るどころか、高らかに笑って彼女の生意気な言動を許し 受け止めた。
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