第二章

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日記には手紙も挟まっていた。 そこから分かったのは若い頃、祖母は、一人の男性に想いを寄せていたということだった。 だが、結論から言うと、その恋心が叶なうことはなかった。 日記の中の男は、数知れず、祖母に気を持たせるようなことをしておいて 祖母の出した手紙は、いつも 受け取り拒否で却ってきていた。 何枚も何枚も綴れたその想いは、とうとう実ることはなく 最後には、"好きでした"と祖母の筆跡によって過去形で締め括られていた その文に目を通せば、祖母がどれだけ その男を好いていたかが分かる。 その想い人こそが、今、八代の目の前にいる男だった。 現suga電機会長、菅原芳永。 この男はさぞ祖母をこっぴどく振ったに違いないと。 彼女は男に対して憤りを募らせていた。
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