第二章

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「会長、八代様をお連れいたしました」 通された会長室で、八代は、 迷うことなく、部屋の中央部へ足を進めた。 足を向けた先にいるのは、ここ――suga電機株式会社、現会長であらせられる菅原芳永。 芳永は、八代に目を向けることなく、重々しい雰囲気で彼女を待ち構えていた。 こうやって二人が個人を認識できる距離で、顔を合わせたのは入社式以来となる 芳永は、部屋の中央に設置されたソファに腰掛けていた。 豊かに蓄えた白い髭と太い眉毛が特徴の厳格なじいさんだ ギロリと威嚇にしてきそうなほど鋭い眼光と70を越えても鍛えられ引き締まったその体は、社長という役職は下に譲っても、彼がまだ経営者として現役であることを物語っている 会長はその鋭い眼光で、まるで彼女を値踏みするかのように見た。 その不備な視線に居心地の悪さを感じながらも 相手がそれならばと、八代も同じように 会長を値踏みする。
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