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彼女の頭が上がるのを待ってから
菅原は話を続けた。
「この会社には、私の他にも親族が勤めていることは知っているね。社長は、私の息子にあたる」
「はい」
八代は、そこまで会社の経営陣に詳しい訳ではなかったが、社長が会長の息子であることを知らない者はいなかったので、そう答えた。
「君は、ここに勤めて何年になるかな?」
「はい。来月を迎えましたら、一年と半年になります」
脈略のない話が続けられるが、そのどれもが八代の期待していた話題ではなかった。
「それでは、私の孫はご存知かな?」
その問いに、八代の眉がピクリと動く。
だが、直ぐに彼女は平静を取り戻し、何食わぬ顔で答えた。
「はい。存じております」
そして、会長に気付かれないように
小さく息を吐き出した。
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