第二章

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「女遊びをですか?」 彼女の声には、無意識に軽蔑するような感情が含まれていた。 本来なら、コントのような。笑いさえ起きても可笑しくないほどの間抜けな言葉並びにも、彼女の真剣に出した声色によって、場の空気は重く流れた。 会長はまるで、その空気を一掃するかのように大きく咳払いをした。 「まあ、あれだ。私も生い先短いのに、跡継ぎがあれでは、不安が拭いきれない」 互いの本題は、そこではない筈なのに、ずれた答えが返ってくる。 「そうですか」 それ以外に、彼女に何と答えることが出来ただろうか。 まだ今年、大学を卒業して2年しか経っていない彼女には、この場を切り抜けるだけの技量も経験もなかった。 「ついてはだ。君に、孫の秘書を任せて、私生活での教育係も勤めてほしい」 「・・・・」 彼女は答えない。 迷っているのか。 断る言葉を探しているのか。 そのまどろっこしい沈黙に またまた会長の短気が発揮される。 「何もタダでとは言わない。それなりの報酬はもうける。勿論、役付きの秘書となれば、それに対しての手当てもある」
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