金壱章 雷光一閃

2/27
前へ
/30ページ
次へ
尾張国(おわり。愛知県)清洲城。   謎の軍勢との防衛戦から 一夜明け、城や街に陽が昇る。   客間・北条の部屋。   障子から差し込む陽の明かりを 感じた北条が目を覚ます。   (朝、か……)   布団から起き上がり 障子を開けて、縁側で 体を伸ばす北条。   (……成り行きとは言え 正直、辛いな……。 『榛名』預かりで、乙女達の 中立を維持していくってのは)   振り返り、自室を眺める北条。   そこには、もうひとつの布団で 寝ているヨシモトの姿があった。   (しかし、当然とは言え 想像妊娠だったとはな。 主治医も、何を診ていたんだか)   いきなりの祝言話も解消された 戸惑いからか、安堵感からか 溜め息を一つ漏らす北条。   「ん、んん……」   暫くして、ヨシモトも 起床する。   「おはよう、ヨシモト……。 良く寝れたかい?」   「あっ、基成様……。 お、おはようございます」   不意を突かれ、驚いた後 寝返りによる衣服の乱れを直す ヨシモト。   「どうする?ヨシモト。 夜襲も無かった事だし 朝餉(あさげ)食べたら ヒデヨシ達に顔出して 一旦、駿河へ戻るか?」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

157人が本棚に入れています
本棚に追加