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 何も見えない。何も聞こえない。何も臭わない。  息をしているのかどうかも分からない。何も感じない。  一歩足を踏み出す。しかし踏みしめる地面がない。 「何なのよ一体……」  目は開いているはずだ。しかし目の前には闇が広がっているだけだった。目が開いているのか閉じているのか、それすらも分からない。  ここはどこなのだろうか?  これは夢なのだろうか?  平行感覚がない。歩いているのか、足踏みをしているのか、後ろに下がっているのか、それも分からない。  大切なものが、目の前で失われてしまった……そう声が聞こえる。誰の声だっただろうか……  何かにつまづく。見ると、足もとに石や枝が落ちていた。  目を上げると砕けた岩や、枝のない木々が見えた。  足もとの石や枝は、そこが砕かれ、そこから切り落とされたものだと分かる。 「一体誰がこんなことをしたのよ」  周囲は暗いままだ。
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