つくづく、甘い。

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窓側の光景から、廊下側に向く。席に座る生徒は少ない。最後列で六法全書に食い付く女子生徒の周りは他の生徒がいないし、血走った目で六法全書を読む女子生徒も関わろうとしない。 背後では仲良さげな男子二名が話しているし、ふざけた男子とかなりふざけた男子の会話は下らないが、案外聞いていて余波を食らう。 教室の開いていた扉を通過し、教壇に立つ先生。四十代後半の女性教師は、地味なブラウスとスカートの身形だ。縁が太い眼鏡をしている。 担任教師に気付いた生徒は自席に着席し始めた。窓側では漸く自席に座れるようになった男子が机に顔を伏せているし、廊下側の女子生徒は相変わらず六法全書を読んでいた。背後の男子二名はまだふざけていたが、女性教師には関係がないらしい。 そんな先生だ。微笑んだまま出席者を確認する先生だった。廊下側から出席と体調の自己申告を繰り返す毎日。これがない学校はない。これを終えると一時間目だ。 「秋くん? どうしたの? 体調でも悪いの?」 先生は心配だとばかりに口にしていた。茶髪の入った髪は朝日でより茶色くなっている。考えていたから、返事が出来なかったらしい。 「え。あ。いや、大丈夫……です」 僕は焦って、答えて、座る。笑い声が幾つか聞こえた。右側左側、後方前方、からだ。男子の笑い声と女子の笑い声だ。悪意はない。単なる笑い話に興がるだけで、僕が逆の立場なら静観する程度の笑いだ。 先生は背後のふざける男子二名に何回か確認して次に移る。出席確認も順調に進み、窓側の男子で止まる。机に伏せた男子は答えない。先生は何回か口を動かして確認するが微動だにしなかった。諦めようよとの声が他の生徒から出ると納得出来ない顔で次に移った。 男子生徒は勿論寝ていないだろう。無視している筈だ。証拠に、指が動いていたりする。 嫌だな。なんだか嫌な気分だ。
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