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身体をギュと包まれる感じに目が覚めた。
外はまだ薄暗い。
『蘭花。』
その声にうっすらと開けた目を上に向ければ、愛しそうに私を見つめる竜兄がいた。
「…っん。…どうしたの?…まだ眠い…。」
覚醒しないままで喋り、竜兄にギュと抱き付いた。
私の髪をゆっくり撫でる大きな手。
『…蘭花。…心配した。』
ポツリと呟いたその言葉で、眠りにつく前に思っていた事が頭に甦る。
「…竜兄。…ゴメンね。ちゃんと話せば良かった。竜兄の気持ち何も考えてなくって…ゴメン。自分の事ばっかりで竜兄に辛い思いをさせたよね。もう、二度とそんな想いはさせないから。本当にごめんなさい。」
顔を上げ竜兄の目をジッと見つめて言った。
『ん。今回だけな。二度とこんな気持ちにさせないでな。蘭花が側に居ないと不安で仕方ないんだ。信じてるけど、不安ばっかりで。お前が居ないと俺、生きてけないから。』
そう言って、強く私を抱き締めた。
あの時。
倉庫の二階で最後、笑いながら言った言葉はきっと不安を隠す為のもので…。
それを理解してやれなかった私は、まだまだ子供なんだと思う。
顔を上げ竜兄の唇に指で触れた。
「…キス…してもいいですか?」
竜兄はフッと優しく微笑んで。
『どうぞ。』
この人が愛しくて仕方がない。
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