【暴走Ⅴ その壱】

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志稀の稽古も終わりシャワーを浴びて出掛ける準備をする。 あっ。そうだ。 いつもなら適当に服を引っ張り出し着る私。 でも、今日はどれを着ようか考えてみた。 たまには、スカートもいいかな? 最近、ジーパンとかばっかりだったしな。 タンスやクローゼットの中は、瑠璃姉に貰った洋服ばかりだ。 とりあえず、スカート。 どれにしようかな? あっ。これ、スカートじゃないけど可愛い。 シンプルな黒地のキュロットスカート。 合わせの所にはシルバーの大きめのボタンが二つ付いている。 んじゃ、これに合わせて上はどうしようかな? タンスを漁る。 黒のキャミソールに肩口が広めのデザインTシャツ。 これでいいかな? サンダルは耀子ママに買ってもらったのがあるし。 何て考えていたら。 『蘭花。今日、着替えるの遅くねぇ?』 雑誌を見ていた竜兄が言った。 選んだ服を着ながら答える。 「ん?あぁ。何着ようか考えて選んでたからねぇ。よしっ!どう?似合う?」  クルッと一回転して竜兄に見せニッコリ笑った。 『珍しいな。蘭花が着る服選ぶとか。いつも適当に引っ張り出してんだろ。どうしたんだ?』 だよねぇ~。 竜兄もやっぱり、そう思ってたんだよな。 「何かさ。昨日、デート行くのに何着ようか一瞬考えてさ。普通の女の子は、デートとかやっぱり着る服迷うのかな?とか好きな人に可愛いって言われる様に悩んだりするのかな?って思ってね。そう考えるとさ。私、今まで竜兄と出掛けるのにそう言う事、考えた事ないなって。いつも思い付きで出掛けたりするから、なおのこと。何か、女子力の無さを感じた。竜兄が可哀想。とか思って。だから、これからは少しは考えようと思った訳。」 説明すると、何故か竜兄はバッと立ち上がりガバッと抱き付いて来た。 何だ? 『…何かすげぇ嬉しいんですけど。可愛いな。蘭花は。まぁ。気付いたのが大和とのデートでって言うのは気にくわねぇけど。』 嬉しいのか? 「そう言うの嬉しい?」 竜兄を見上げ聞いてみた。 『蘭花が俺の為に色んな事考えてくれるのが嬉しい。蘭花はどんな格好でも可愛いぞ。』 優しく微笑む竜兄。 「私。いつも竜兄の事、考えてるよ。」 ギュ~と抱きついた。
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